雑魚正宗のこと

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Be-PALでおなじみの雑魚党関東ブロック長・秋山明彦さんに、自身がプロデュースされた「雑魚正宗」を送っていただきました。以下、インプレッションです。なかなか、面白い竿ですぞ。


雑魚正宗は1.9mの小物竿で、1.7mに縮めるマルチレングスもついている。1.9mと1.7mにどんなちがいがあるのかなと、南国の黒潮育ちのわたしなどは想像できなかったのだが、いざ縮めてみるとなかなかこれは具合がよいような気がする。たぶん、テナガエビの穴を狙っていて、これはちょいと短い方がいいなあというようなことがあるのだろう。

調子は、張りがあってしっかりしているけれど、硬いという感じではない。もともと、どのジャンルに属する竿なのかも見当がつかないので、硬い・柔らかいの基準がぼくにはわからないのだけど、要するにこのサイズはこのサイズなりに、万能に使えるのではないかと思う。手に持った感触はとてもいい。

写真にあるように、何か由緒正しそうな端布のようなもので作った竿袋がついていた。タナゴのシモリ仕掛けやエビ針も同封していただいた。自分だけ申し訳ないのだけど、替え穂も送っていただいた。

そして、写真を撮るのもおそれおおい、坊主よけのお札までついている。これは夢枕獏さんのデザインで、安倍晴明神社での祈願つきだ。陰陽師も泣いて喜ぶお札なのである。「梅干を見たら、これを取り出して祈るべし」と書いてある。梅干しは、見るだけでも坊主になるくらい強力なボーズ神だったのだ。今度釣りに行くときは、あいつを黒焼きにして友人の竿に振りかけてみようかと思う。そういえば昔、綾北川で夢枕さんたちと一緒に朝飯を食べたっけ。

とりあえず近所の大淀川でテナガエビを、と2回トライしたのだけど、いずれも姿も見えなかった。そろそろ出てきているのか、いっそハゼ釣りでデビューさせてやろうかなあ。

鮎>夏に逢いにゆく

今年の鮎解禁は、アユツールの開発者・山田武雄さんと宮崎県五ヶ瀬川でご一緒させていただきました。山田さんはパソコン通信ニフティサーブ時代からのお仲間で、かれこれ15、6年にもなりましょうか。ここ10年ほどは、ほぼ毎年、6月1日に宮崎のどこかの川でご一緒させていただいています。

今年はあいにくの雨で、ほとんど釣りをすることもなく、五ヶ瀬川沿いの川並ドライブイン別室で例によってオサケばかり飲んでいましたが、楽しい時間を過ごさせていただきました。梅雨に入り、雨続きで、毎日「鮎に行きたいなあ」と空ばかり眺めているところですが、94年の解禁日に初めてアユツールを使った時の釣行記が出てきましたので転載させていただきます。

情報としては古いので恐縮ですが友釣りを始めて2年目、一人で迎える初めての解禁、10年に一度という絶好調だった綾北川で、アユツールは見事に仕事をしてくれ、以来、私はこの時代に逆行したような一本鈎仕掛けにほれこんでおります。


夏に逢いにゆく
綾北川釣行記


キューバのピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバのジャズで街を抜けて午前3時に綾北川に着いた時、車のFMラジオからスメタナのモルダウが流れた。できすぎている。窓を開けて、瀬の音に耳を澄ます。

ついさっきまでサラーさんと電話でげらげら笑っていた川開きが、現実になりつつある。闇の中でひときわ黒い川面。水は多いか少ないか、よくわからないけれどこの水の下には、鮎がいる。夜明けまであと2時間。

車から何度も降りて、川を見る。空を見る。川は水の音。空は満天の星空。冬のような澄んだ空。川原でぼんやり緑色に浮かぶ光は、テントの灯りだろうか。堤防の上を、車のヘッドライトが行き交う。祭の前の高揚。夏が始まる朝は、時計がひどくゆっくりと進む。

東の空が白み始めた頃、すぐ近くの養殖場にオトリを買いにいくといつも無愛想なはずの親父が、なんだかテンションの高い声で「おはようございます」などという。

「今年、鮎はどうでしょうね」と聞くと
「多いですよー。こんな年は10年に一度です」
うれしがらせをいうではないか。

黄色い容器にあけてくれるオトリも、いつもよりずっと多い。ムリョ数十匹。左手を水で冷やしておいて、背の色がいちはやく変化したやつを3匹つかんで、オトリカンへ入れると、満足そうな顔をして「1000円です」という。なんか、盛り上がってるのがよくわかる。

川開きを迎えるのは初めてなので、喜びよりも不安があった。ひとさまをわけてでも釣ろうという気概に欠ける僕は人出が多いと、すぐに帰ってしまいたくなる。今日はどうなんだろうか。釣る場所はあるだろうか。

オトリを買って、川にもどった時、さっきまで僕が車を停めていた場所にライトバンがとまり、二人の釣り人が、いそいそとウエーダーをはいていた。しまった。やられたかもしれん。

「おはようございます」と呼びかけると「あ」とか「うう」とかいって、さっさと護岸を降りていってしまった。東の空は、明るくなり、金星だけが輝きの名残をとどめていた。あせって二人の後を追う。

綾北川運動公園前の瀬。護岸を降りると、芯の太い、水深のある分流があり、その深みに向って流れ落ちる、短い急瀬のヘチをのぼって本流へ向う。二人は、どんどん上り、瀬の上流の瀬肩の、さらに上のチャラへ行ってしまった。

ラッキー。絶好の瀬は今のところ僕だけではないか。約70メートル続く、膝から腰の早瀬。一番釣りやすいしところだし瀬肩やチャラよりも、大きなのがいそうだ。石もいい。

そこらじゅうの石が茶色く磨かれていて、時々、おっと思うような野太いハミアトもある。オトリカンを石で固定し、煙草に火をつけ(^o^)y-゚~~、こうやって一服やる。ウエストバッグからカロリーメイトとジャワティを取り出して、むしゃむしゃ食べる。

なんだなんだ、手がふるえているぞ。おちつきなさい。今、オトリを入れても目印も見えないよ。タビから沁みてくるひさびさの水の感覚が気持ちよい。あと15分もすれば、僕の夏が始まる。

竿に仕掛けをセットして、オトリを入れた時、僕の下流40メートルに一人、上流30メートルに一人、対岸に一人という状況だった。

今年はこれで通すつもりのアユツール1本バリ仕掛けに、オトリをつけしばらく足下で遊ばせてから、下流へ送る。竿を寝かせて、鮎を沖に進ませていると、いきなり目印が飛んでガツンときた。

でも、かからない。ビュッ、グルン、ガツン。掛からない。ははあ。これが単バリの掛かりの遅さというやつかな。仕掛けを上げてみると、逆バリのセットを間違っていたらしく、ハリが上を向いている。

正しくつけなおして送りこむと、目印がカミへビューンと飛んだ。

きた。きてる。

え?なんだなんだ。大きいぞ。大きい。今日は15センチが10匹の予定だが。反転して下流へどんどん走るのを、ついて下がって引き寄せるとまぶしいほどの黄色い追い星がギラリと見えた。げげ、でかい。盛期なみの鮎だぜ。20センチはある。

背中は真っ黒、追い星はふたつついてるんじゃないかというような、見事な野鮎。しばらく、タモの中でいじくりまわしたり、スイカの香りをかいだりしたけど特に弱ったような様子もない。

オトリにすると、すぐに同じような型の友達を連れてきてくれた。
入れがかりが始まった。

オトリを下へ送る。竿を川に対して90度の角度にして、糸を張りながら寝かせると、オトリはゆっくりと川を横切る。茶色い石が固まっているあたりまできて、竿を立ててやるとそこからオトリはじわじわ上流へ泳ぎ始める。たいてい、そこまでで、目印がふっとぶ。

掛からなければ、ずっと上流に泳がせて、自分の前を通過したあたりでカミ竿にして寝かせてやると、今度は手前に戻ってくる。それを繰り返しながら、少しずつ、瀬を上流へ上っていく。そんな小細工をやらなくても、まあ、とにかく鮎の多いこと。どこに入れてもグルグル、ガツーン。夢みたいだ。一番鮎のお祭だ。いちいちついて下がるので、へとへとになってしまう。

それにしても、この瀬は、ほんとにいいとこは誰も竿を入れない。地元の人は、ほとんどウエーダーなどはいていないので、限りなくおかっぱりに近い。入っても、膝まで。竿もせいぜい8メートルで、7.2が主流。イトは06をつけ、不文律でもあるのか、オモリは決して使わない。

7.2メートルの竿に、06だ08だというイトをつけて、ウエーダーをはかずに、それでも、綾北川の鮎は釣れる。こんな情報時代に、実に素朴な友釣りをやっている。曳舟なんて、孟宗竹が主流なんですから。ふと、ここはタイツ禁止だったかしらん、と思ったくらいです。

くやしいけれど、僕より釣る人もいっぱいいるのですよ。あ、これを読んで押しかけてはいけませんよ。綾北川は小さな川なんだから。名人の皆様は、五ケ瀬の尺鮎と遊んでくださいね。

昼までで、34匹掛けて、26匹取り込んだ。バラシの内訳は、根掛かり2(流木にひっかけた)、身切れ4、自動ハリス止め切れ2。ハリをがま鮎キープに変えたり、無理して抜かずに引き寄せれば、いくつかはなんとかなったはず。いい勉強になった。

鮎は若鮎。ぬるぬるして、まっ黄色で、見事な香り。ちび鮎が5に、あとは19~21センチ。最大で85グラムというところ。

さて、アユツール。使用したのは、初期用のセットでハリが新改良トンボ8号、掛けバリと逆バリの間隔が4.5センチというもので、ちょっと小さすぎたかもしれない。けっこう、口掛かりがあったのも、そのせいだろう。大体、背掛かり8に、口掛かり2という感じ。腹掛かり、目掛かりはなかった。次からは、ひと回り大きなものでやってみよう。

掛かりが遅いか、早いか、僕の技術では判断のしようがないので、問題なし。根掛かり2つは、流木なので不可抗力。エビが1回というのは、強風でかなり竿がフレていたし、そもそも竿の扱いがラフなのであるから、好成績。タモガラミもゼロ。やはり、思ったとおりの道具だった。少し値段が張るけれど、どってことない。数百円のことですからね。

昼に岡にあがって陽を浴びていたら、気難しそうな年代のおじさんたちが次々に寄ってきては、妙に明るい声で呼びかけ、話をしていく。朝から西米良村にいって、ここに転戦してきたという人や、大淀川の上流で24センチクラスを頭に60近く掛けてきたという人もいた。

クーラーボックスの鮎を見て「上手やんか」といった、おじさんの声を、僕は生涯忘れない(^^;)。みんなニコニコしている。僕もニコニコ笑っていた。

綾の山は、照葉樹のさまざまな明度の緑が、陽をはね返して、
その上をゆっくりと雲が流れている。

夏が始まった。

釣りフォーラム「清流」会議室より転載

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綾北川は、こんな川です。